――沈黙という感覚――

この回は、耳を休ませることで、心を静める方法を扱います。

にぎやかな一日が終わったはずなのに、
なぜか気持ちが落ち着かない。
そんな夜、ありませんか。

疲れているのに、眠れない。
何かをしたわけでもないのに、
頭の中だけが騒がしい。

多くの場合、それは「心」ではなく、
耳が休めていない状態です。

私たちは、思っている以上に音に囲まれて暮らしています。
音楽。テレビ。通知音。人の声。
それらは決して悪者ではありません。
ただ、多すぎるのです。

静かな場所に行くと、
最初に感じるのは安らぎではありません。
むしろ、ざわつきです。

急に不安になったり、
考えごとが浮かんできたりする。

でもそれは失敗ではない。
沈黙が、心の奥にたまっていたものを
そっと表に出しているだけです。

私は、あえて音を消す時間をつくっています。
音楽も流さず、テレビもつけない。
ただ、部屋の中にある生活音だけに身を置く。

最初は落ち着きませんでした。
「何かしなきゃいけない気がする」
そんな気持ちが、じわじわ出てくる。

けれど、不思議なことに、
数分すると耳が静かになっていく。
それと一緒に、呼吸も深くなる。

音がない時間は、空っぽではありません。
むしろ、満ちています。

風の音。
遠くを走る車の音。
自分の呼吸の音。

耳が休むと、
世界はずいぶん優しかったことに気づきます。

今日は、ひとつで十分です。

・夜、テレビを消したまま過ごす
・朝、5分だけ無音の時間をつくる
・音楽を「流さない日」を決める
・静けさを、何かで埋めようとしない

全部やる必要はありません。
一つで十分です。

今夜は、音を一つだけ消す。
それだけ。

今日はここで終わりにしましょう。

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