――手の感覚が心を支える――
理由ははっきりしないのに、
なぜか落ち着かない日があります。
忙しかったわけでもない。
嫌な出来事があったわけでもない。
それでも、胸のあたりが少し硬い。
そんな感覚に、覚えはありませんか。
私は、そういうときほど
「何を考えているか」より
「何に触れているか」を見直します。
手は、正直です。
考える前に、反応する。
安心も、不安も、言葉より先に伝えてくる。
誰かの手に触れたとき、
温度や重さで、気持ちが分かることがあります。
触れることは、
「ここにいる」という確認でもある。
ところが日常では、
手を使わない時間が増えました。
画面をなぞる。
ボタンを押す。
軽く触れて、すぐ離す。
便利だけれど、
安心には、少し足りない。
考えごとが多いときほど、
意識は頭の中に集まりがちです。
触覚は、
そこから引き戻す役目を持っています。
木のざらつき。
布のやわらかさ。
陶器の重み。
金属の冷たさ。
どれも、
「いま、ここ」に意識を戻してくれる。
私は、
温かい器を両手で包む時間が好きです。
それだけで、
呼吸が少し深くなる。
大げさなことは、いりません。
道具を手入れする。
植物に触れる。
洗った食器を、丁寧に拭く。
目的は、早く終わらせることではなく、
触れている感覚を、味わうこと。
触覚には、
安心を思い出させる力があります。
それは、
頭でつくる安心ではなく、
体が知っている安心です。
五感を整える、触覚の小さな習慣
・温かいものに、両手で触れる
・手作業の時間を少し増やす
・素材の質感を意識して選ぶ
・「早く終わらせよう」と思わない
時間は短くていい。
丁寧であれば、それで十分です。
触れることで、
体はちゃんと応えてくれます。
落ち着かないときほど、
考えすぎる前に、
手に戻ってくる。
それだけで、
世界は少し、やわらかくなります。
今夜は、ひとつだけ。
触れた感覚を、終わらせずに残して眠る。

